とくべつ放課後クラブ

6月22日の火曜日の午後、にぎやかな集団が大江店を訪れました。

左沢小学校から歩いてきた集団は、二十八度の気温とワーワー騒ぎながら歩いてきたせいで、汗ばみ火照っている顔をしておりました。しかし、瞳は輝き、これから起こるイベントが楽しみだと言わんばかりのオーラを発しています。それが、迎える私にはプレッシャーなんですけどね。

店の前で彼らは整列し、帽子をとり、リーダーの掛け声とともに、

「お願いしまーすっ!」

と元気よく挨拶してくれました。

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これは大江町立左沢小学校の特別授業で、「放課後特別クラブ」というイベントです。学区内の商店に行っていろいろ体験したり、学校で普段は体験できない活動をしたりするようです。

例えば、お菓子屋さんでお菓子作りに挑戦したり、お寿司屋さんでお寿司を握ったり、畳屋さんで畳を直したり、学校で餃子を作って焼いたり、陶芸したりという体験コースが用意され、四年生から六年生がそれぞれ希望の体験コースを選んで、そこに体験しに行くというものです。希望者多数の場合には、先生が振り分けているようですが、六年生の希望が優先されているようですね。

というわけで、当社も社会貢献活動の一環として、昨年から参加させてもらいました。昨年担当の太田先生が、

「海野さん、子供たちに廃棄する電化製品を分解させるだけでいいですから!」

という提案に、

「そんなんで面白いですかね?」

と返す私。

「いえいえ、子供たちは絶対楽しいと思いますよ!ぜひ、子供たちの夢を!」

の半ば強引なお誘いに、

「わかりました!ひと肌脱ぎましょう!」

と、簡単に乗せられて引き受けたのでした。(単純)

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今年は、昨年作ったレジュメ(注意事項やパーツの紹介を書いてある)をちょっと改定しました。もっと電気の安全性や、楽しみを持ってもらうためです。

そして、昨年よりも多い14名もの子供たちが来ると言うので、分解する製品も数多く用意しました。なかには、話題の液晶テレビ(!)、パソコン、DVDプレーヤーなど、子供たちが好きそうなアイテムも数多く用意してみました。

挨拶の終わった子供たちを、二階の特別ルーム(といっても、応接室と休憩室)に招き、今日の目的や注意事項を作ったレジュメに沿って説明しました。

しかしながら、人の話より、すぐに分解したい子供たちですから、私の説明はほぼ聞いておりません(断言)早速、目線は私より分解したい製品に向けられています。

視線が熱いじゃなくて、視線が冷たいってこのことなんですかね?

ですが、そこで負ける私ではありません。そこは昨年も味わった屈辱。そこを見越して、発光ダイオードに電気を流して発光させてみたり、ショートして溶けたコンセントを見せたりして子供たちの注意を惹きながら説明していきます。子供たちの

「おぉーっ!」

という感嘆の声に、優越感を感じる大人げない大人です。

さて、そうしているうちに、分解作業が始まりました。六年生から、めいめいに好きなものをとっていきます。四年生は、残ったものからパソコンのキーボードをとって行きました。君たちは賢い。無難な選択です。

見ていますと、最初は恐る恐る電化製品をとり、自分の持ってきたドライバーでぎこちないながらも、分解していきます。ですが、だんだん乗ってきたのでしょう。加速度的に、どんどん分解していきます。

というか、もう少し観察しながら分解しろ!

おそらく、子供たちにとって「あとのことを気にせず分解していいよ!」という最初の言葉を聞いて、至極の喜びの時間になったに違いありません。壊しても怒られません。どんどん、壊していいよ!と言っているのですから。

そのためか、みんな、ニコニコしながらドライバーを回していきます。

さらに、観察しておりますと、電機業界に携わる私ですら、ここまでバラそうとするか?というぐらいにばらしていきます。

私は、その光景を見ながら、アマゾン川に落ちた牛がピラニアによってあっという間に骨にされてしまうという、子供のころに観た番組『驚異の世界』のイメージを重ね合わせました。

そのためか、壊れてもう動かなくなった電化製品にさえ、同情の念が湧いてきます。最後、使い古された後、ここまで分解されて子供たちの記憶として残るならば、電化製品も本望かもしれない。電化製品よ、どうぞ安らかに成仏してください。(合掌)

一通り分解すると、子供たちも飽きてきます。時間が余ってますが、気にせず後かたずけをさせます。実は、残りの時間を有効に使うべく、サプライズが用意されておりました。

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それは、電化製品の使い方実習と称しまして、IHの調理器具で焼きそばを子供たちに作ってもらったのです。私の母と妻と二人がやってきて、あっという間に調理実習に授業に早変わりです。

興奮冷めぬまま、早速料理をはじめます。

ことどもたちに調理をお願いしました。すごいです。そりゃ、もう男の料理ですから、作り方も食べ方も豪快です!あっという間に、鉄板には何もなくなりました。また、私の眼には、アマゾン川の光景が・・・

食べ終わって、ちょうど時間が来たようです。

子供たちを集め、最後に感想を聞いてみると、「電化製品の中身がわかって良かった」とか「いろいろな部品が使われているんですね」とか「楽しかった」とか、まぁ小学生らしい普通のコメントでございました。

もっと突っ込んだオタッキーな質問や意見が出なくて、ほっとしたのでした。

さて、そこで、授業はお開きとなるのですが、焼きそばの材料が余ったのを見た彼らは、

「焼きそばのおかわり作っていいですか?」

だって!さすが、育ち盛り、食欲も旺盛だこと。

あとあと、妻に聞けば、動けなくなるぐらいまで食べていった子もいるそうです。大したもんだ!

そうして、今年の特別放課後クラブは終わったのでした。

その後、今回、わが店に来てくれた子供たちの親御さんともお会いしました。

皆様より、口々に

「先日はありがとうございました。本当に子供は喜んでました。」

と御礼の言葉を頂きました。

「いえいえ、とんでもございません。子供たちが電化製品に親しんでくれ、とてもうれしく思います。男の子はもともとメカが好きですからね。」

と私が答えると、皆さん同じリアクションで、

「いえいえ、分解したことも面白かったみたいですが、それより何より、食べた焼きそばがおいしくて、お腹一杯になるまで食べさせてもらったのが、一番面白かったそうですよ。」

「ガーン!」

面白かったのは、分解授業じゃなくて、そっちかい!


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